【前回の記事を読む】千鶴の両脚の隙間に自分の左脚をそっと差し込んだ。わずかに触れないほどの距離感を保ったが、彼女はどんな反応を示すだろうか…すると千鶴はその微かな気配を感じ取ったのか、両脚を内側と前方に少しずつ動かし、九条の脚を軽い力で挟んだままティーカップの最後の一滴を飲み干した。彼女の形が整えられた眉毛が、自分よりやや色素の薄い瞳が、通った鼻筋が、セーラ服の袖口から覗く手首の骨の突起が、九条…
[連載]同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【最終回】なつきめい
海外旅行の土産を手に定期的に旧友を訪ねる。しかしそれは、海外の友人を利用した偽りの習慣だった。何故そんな嘘を重ねるのか――
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第16回】なつきめい
千鶴の両脚の隙間に自分の左脚をそっと差し込んだ。わずかに触れないほどの距離感を保ったが、彼女はどんな反応を示すだろうか…
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第15回】なつきめい
高校時代の母は魅力的な容姿の持ち主だった。文化祭、元恋人の男に追われる姿を見た美雪は手を差し伸べる。それが始まりだった――
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第14回】なつきめい
母はミユキさんを追いかけて家を出た――SNSには男性と寄り添い笑う「旧姓・九条みゆき」の文字。あの写真が再び脳内を…
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第13回】なつきめい
父が電話で告げた母親の失踪――パート先は三か月前に辞め、父には働き続けていると偽装していたらしい。既読は付くが返事が来ず…
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第12回】なつきめい
「地元で肩身が狭いっていうか、早く結婚したいんだよね」 彼の台詞に、形容しがたい感情が押し寄せてくるのがわかった――
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第11回】なつきめい
「よかったら連絡先交換しない?」新入生歓迎会でひとつ上の慎二は私に声をかけた。大した特徴もない私のどこに魅力があるのだろう
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第10回】なつきめい
パソコンの画面には母とミユキさんがキスをする一枚の写真が。それは友達同士の戯れのキスではなく、明らかに…
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第9回】なつきめい
「美夏と一緒なの正直微妙」「一人っ子で箱入りって」 友達だったはずの同級生。加速する会話は私の感情を揺さぶるのに十分だった
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第8回】なつきめい
母の虚ろな表情は私にあの写真を思い出させた。それは母と、母の旧友が――ミユキさんが現れたのは、小学校三年生の頃だった
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第7回】なつきめい
「お父さん、本当に何もできないんだね」 父はテーブルも拭かずに家を出る。父娘の時間への戸惑いは次第に別のものへと変わり――
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第6回】なつきめい
「あの子はあの電話の直後に死んだんだよ!」生活保護申請という娘からのSOSを退けた区役所。真田は憤りを抑えられなかった
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第5回】なつきめい
心を病んだ妻が見せたのは自己啓発セミナーの冊子だった――満足気に会を振り返る妻の側で、娘は前時代的な会員を怪訝に思い…
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第4回】なつきめい
「私と一緒に入会していれば!」 娘の突然の死にヒステリーを起こす元妻。男は、ゆっくりと、ホットカーペットに寝そべって――
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第3回】なつきめい
「この後、家に来ない?」 男女はどの時期で関係を進めるのだろう。付き合って三ヶ月、私を自宅に誘う彼の目には欲求と期待感が――
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【第2回】なつきめい
「こんなこと言っていいのかわからないけれど」 突然の告白を承諾した私に、彼は思いもよらない言葉を口にした
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小説『同じ名前の鳥が鳴く[人気連載ピックアップ]』【新連載】なつきめい
私は先ほど生まれた感情を恋心と呼ぶことにした――田所と名乗る大学院生は声が小さく、猫背で、頼りなく。しかしその唇にだけは…