米ドル換金を強制するエジプト
ギリシャ(アテネ)→エジプト(カイロ)一九七四年一月五日
ローマからブリンディッシュ行きの列車で会った、大阪市出身のI君と二人で旅している。
彼も大学卒業後就職一年で退職して旅に出たそうで、私より二歳年下である。カイロに行くべく、アテネ市内のエジプト大使館でビザの申請をする。すると、八十米ドルをエジプトポンドに交換して、その銀行証明書を添付しないとビザの発給はできないと言われる。また、学生への緩和措置もないという。
エジプトでは一九七二年から外貨獲得策の一つとして、外国からの旅行者に対してビザ申請時に八十米ドルのエジプトポンドへの換金の義務付けを決定したそうだ。共産諸国等でも同様の米ドルへの強制交換を課している例があるが、滞在日数や学生などへの割引などの緩和措置がある。
しかし、エジプトでは一律の八十米ドル換金を強制されるので、われわれのような貧乏旅行者にとってはどうしても使いきれない。それで、アテネでのビザ取得は止めて、とにかくビザなしでカイロ空港まで飛び、空港での入国審査時に八十米ドルの半分程度でビザ発給を交渉する、強行突破を試みることとする。
また、昨年コロンビア入国のためにパナマで購入した航空券のうち、未使用分(Medelin→Bogota→Quito)六十一米ドル分を、アテネ→カイロに利用できないかを、アテネ市内の航空会社にあたる。すると、スイス航空一社だけが受け入れてくれて、学割三十六米ドルでチケットを切ってくれた。残りはオープンチケットにしてもらう。