【前回の記事を読む】セクハラ職場を経験した私が惹かれた「器の大きい」人とは

出会い

三十五歳。恋愛するからには、結婚前提でなければ嫌だった。仲の良い両親を見て育った私は、結婚して子どもを持つことに憧れていた。同時に、仕事も続けたかった。

二十代半ばからお見合いなどで出会った男性に「仕事を続けてもいいですか?」と尋ねると、たいていの男性が「いいですよ。家庭のことをちゃんとしてくれるのなら」と返事する。しかし、実際に家事を専業主婦なみにきちんとこなして、そのうえで仕事もするというのは、私には不可能に近い。

友人のなかには「お見合いの席では、家事が大好きですと言うといて、結婚してしもたらええやん。結婚してから、私、この仕事やりたいわぁ、と上手に甘えたらええねん」と言う女性もいた。

でも、私はそんなふうに上手に甘えられる自信がまったくなかった。それに、ライターの仕事が楽しかった。多くの人に取材し、知らない世界を教えられ、言葉にして読者に伝える仕事。一年に大みそかと元旦の二日しかお休みがないような生活で、朝から晩まで飛び回っていた。

目覚まし時計が鳴って「眠い。もうちょっと寝ていたい」と感じても、「今日は○△の取材があるんだった」と思い出すと、はね起きることができた。愛する夫がいるから仕事もがんばれる、良い仕事をしているから夫とも敬愛しあえる。そんな夫婦像を夢見ていた。だから「僕も家事は協力するよ」と言ってくれる男性を求めた。

Nissieさんは、どうだろう。彼に惹かれながらも、惹かれる気持ちが加速するのを恐れてブレーキをかけている状態が続いた。最終的には素すの自分を出して、うまくいかなくなったらサークルを退会すればいい、と開き直ってもいた。