【前回の記事を読む】都会から田舎へと移住した男。突如届いた一通の手紙とは…
再会
俺はビールを三分の一まで飲み、皆がスマホをいじるのを眺めながら腰を下ろし、テーブルに並べられている刺身を食べた。ビールを飲み干した後、目の前に厚子が現われた。
「挨拶素晴らしかったね。よ! 生徒会長」
「会長って言うのはやめてくれる。もういい年なんだから」
「成人式で会った以来だけど変わんないね」
「そっかなあ。あなたもあんまり変わらないわよ」
「ありがと。今日はゆっくり飲んでいくよ。じゃあ、また近いうちに」
厚子が離れた後、サラダを食べおしゃれな小鉢に入った煮物や茶碗蒸しを食べ、二杯目のグレープフルーツサワーを頼んだ。十分経った後、今度は大勢の集団が俺の座っているテーブルを囲んだ。
「よ! 元気にしてたか?」
当時の野球部主将の浅野隆だ。
「なんとか元気で。皆も元気?」
「俺らもなんとか」
「それはなによりで」
「今、どこに住んでるん?」
「新幹線で二時間、そこから車で一時間。そこで古民家を買い野菜を育ててる。そんな田舎暮らしさ。皆は?」
「おのおのだよ。地方に移住したやつがいれば、都会に住んでるやつも。ところで、お前は結婚したのか?」
「独身。田舎に嫁は来ないさ」
「向こうにいた生徒会のメンバーだった娘、今も独身らしいよ。友達から始めませんか?って、メールアドレス聞いてくるよ」
一目散にその場を離れ、聞きに行った。
「ほら。スマホ出して」
スマホを取り上げられ電話帳に登録された。
「今度会う時は結婚してたりして? ま、幸運を祈るよ。今度、部の仲間と飲みに行こう。そのほうが少人数で気を遣わなくてもいいし。その時は誘うよ。じゃあ、また!」
野球部の仲間が去った後、すき焼き鍋が煮立ってきたので、火を消し、レンゲと箸を使い、きれいな器に乗せ、冷ましながら食べた。ちょっとタレが甘かったが美味しかった。蕎麦を食べ三杯目のノンアル梅酒を頼んだ。