年末までに、12月21、23、24、26、29日と5回点検を行い、必要に応じてパンの交換と補充を行った。フリーモードに設定していたのに、29日にはかなり大きい個体が巣から最も遠い店舗外で1頭捕獲され、中で死んでいた。ロックモードに切り替えて捕獲する前日に測定するためのはかりを購入するつもりだったので体重は測定できていないが、優に300gは超えていると思われた。
設置後3日以内に死んだのだが、体を丸くして座ったまま死んでいた。体毛が毛羽立っていたのが印象的である。鼻の先が出血していたので、少しは出ようとして努力したのだろう。だが途中であきらめ、ストレスによる心労で座ったまま眠るように死んだように見えた。
12月26日には、巣近くの店舗内に設置した7箱すべてのパンの残量が0になっていて、パンを交換した後に面白い事が観察された。なにげなく振り返るとドブネズミが近寄ってきていたのだ。写真を撮って記録したが、捕獲具にパンを入れる時のガチャガチャと言う音を聞きつけて2匹が飛んできたようである(写真1)。
先に来た個体が、巣から最も遠い捕獲具、つまり左下の捕獲具に入ろうとしている姿が写っていて、奥には少し小さめの個体が顔
を出している。水揚げされた水産物の加工作業は夕方から始まり翌日の早朝に終わるので、点検とパンの交換は閉店前の9時頃に行っていた。食パンは小魚よりもよほどおいしかったのだろう。捕獲具の中のパンがなくなっても、同じ場所に定期的に運んでくれるパンを楽しみに待っていたことになる。
私はこの時に思った。餌付けによる捕獲法は卑怯な方法だと。数日後には捕獲されて殺されるかもしれないのに頼りにして待っている。定期的に給料を運んでくれるお父さんが家族に対して急にひどい仕打ちをするのと同じではないか?捕獲したネズミを間近で観察する機会が増えていたこともあり、少し後ろめたさを感じた。12月29日の点検後正月休みに入ったので、ロックモードに切り替えて捕獲する日を1月6日に予定し、それぞれの捕獲具にはパンの小片を30個入れた。