【前回の記事を読む】「この家で女に価値はない」弟に媚びるしかなかった少女の孤独
娘に復讐する、あるいは大いなるお荷物にする毒親たち
女には価値がないのに生まれてきて
カウンセラーが男性に変わったが、娘はカウンセラーを怖がることはなかった。男性の方が話しやすいようである。母親とは違い媚びたり愛嬌を見せることはないが、同性の友人たちから嫌われた経験からか、若い女性とはどう話していいかわからないようである。一言でいえば、女の方が怖い、のである。
この女性は、中学のときに小学生の弟たちから棒で殴られた傷が原因で、足を痛めてしまう。このときは父も母も大変な怒りようだったと言う。これについては、母は次のように述べていた。
「いくら女に価値がないからと言って、していいことと悪いことがあるんですよ。それがわかっていないと息子たちはただの犯罪者ですよ。わたしの旦那さんもその辺のことはよくわかっていて、息子たちの行き過ぎには注意してくれていました」
以来、暴力は振るわれなくなったと言うが、娘は早く歩いたり走ったりするのが難しくなってしまう。
弟たちは姉に気兼ねするようになったのか、使い走りなどはあまりさせなくなったようだが、姉の方でも弟たちが怖くなり、距離を置くようになった。そればかりか、学校も不登校になりがちであった。そんな中、異性の言うことを聞くことで、彼女が自分の居場所を作ろうとしたことは不思議でも何でもない。ただその話は、痛ましい限りだった。
妊娠中絶し、高校へは行かず、ぶらぶら家事の手伝いをしたり、男性と付き合ったりする娘を相談に連れてきたのは、母親であった。
「この子は自分に価値がないということも、価値がない人間がどうして生きていったらいいかということもよくわかっていないんです。このままじゃ一生わたしのお荷物ですよ。先生よく教えてやってください」
愛嬌のある顔でそう申し込んできたのである。