「清!」
紗久弥姫は顔を真っ赤にして青龍の後ろへ隠れ、清姫は我に返ると、羅技の傍に立っている若者に話した。
「赤龍殿ですか?」
「ああ!」
「羅技の身体にある傷跡は龍神守の里を守る為、和清の嫡子に扮し、畑を荒らす獣や、時に里を襲って来たそと人と戦ってその時に負った傷です。決してむやみに獣を殺めたり、人と争う等は行っておりませぬ。羅技は心がとても広く、優しく、里人達に愛されておりました。里の子供達は羅技の姿を見つけると直ぐに回りを取り囲んでおりました」
赤龍は身体を震わせると、突然噴き出して笑い出した。
「アハハ! この姫は根っからのじゃじゃ馬姫だ! それに誇り高く男らしい! 余はそれがとても気に入ったのだ。それに美しいからな」
そばで聞いた羅技はすかさず赤龍に肘鉄を入れた。
「うっ。やられた」
「姉上様……」
青龍の後ろに隠れていた紗久弥姫が、小さな声でつぶやき泣きそうな顔をすると、青龍はくすっと笑った。
「そなたは本当にころころと顔色が変わるな! 余はそれがとても愛おしく思う」
「そうだろう! 我も紗久弥のころころと顔色が変わるのを見るのが面白くてつい、からかってしまうのだ」
羅技も同調した。
紗久弥姫は怒って思いきり頬を膨らませると、青龍と羅技姫は吹き出して笑い出した。
「青龍様。それに羅技姉上様。私の顔を見て笑うなんて失礼です」
「許せ」
「す、すまぬ……」
二人は紗久弥姫の顔を見てまた笑った。
「青龍様と羅技姉上様の馬鹿~」
「そなたの顔がころころと変わるのを見るととても心が和むのだ。里を守る為に戦うと言っても、時には激しく心が折れそうな時もあった。しかし、そなたや幸姫の笑顔を一瞬見るだけで力が湧き出て来て、嫌な事は一瞬で吹き飛ばせた。しかし……今の顔は特に面白い! あはは!」
すると、清姫が静かにたたずむ若者に尋ねた。
「私は清と申します。三番目の妹姫の幸姫を御存じありませんか?」
その若者は清姫達をぎっと睨んだ。