【前回の記事を読む】【小説】「そなたの心根が気に入った」姫、龍神の妃となる
紗久弥姫の舞
「姉上様……」
「羅技や、紗久弥が涙を浮かべております。そなたが身体に負った傷を見ては、何時も泣いていたのですよ」
清姫が言うと、羅技姫は紗久弥姫の頭を優しく撫でた。
「心配を掛けてすまぬ。我はそなたと幸姫の笑う顔が大好きじゃ。買い出しに行くと、真っ先にそなたの欲しい物を探していた。幸姫の嫁入りにと求めて来た領巾よりも、今、そなたが羽織っている領巾のほうが綺麗だぞ。それにとても似合っている」
「姉上様。だ~い好き!」
紗久弥姫は嬉しさのあまり勢いよく飛びつき、羅技がよろめくのも構わず強く抱きしめた。
「この衣と領巾は青龍様が下さいました。ところで……姉上様のその衣はどなたに頂いたのですか?」
羅技は思わず含み笑いをし、
「いや……赤龍殿が我を妃にしたいと申したのでな。全身傷だらけの身体をした我でも良いか? と、着ていた衣を全部脱いで赤龍殿に身体を見せてやったら、赤龍殿がこの衣をくれたのじゃ。が、剣の方が立派だろう! 我の剣と赤龍殿の尾にある龍の最強の武器である刺を合わせた剣である!」
清姫と紗久弥姫は驚いて思わず顔を見合わせた。
「まあ? 衣を脱いで素肌を見せたのですか……」
と清姫が問うと、
「ああ! 全身くまなくな!」
とあっけらかんと羅技は答えた。
「ああ……っ」
清姫が気を失いかけて倒れそうになると、白龍が咄嗟に抱き抱えた。