宇宙船の資材の多くが月で調達されるが、この月で資源調達をするのがアリロボである。
通称働きアリロボ、正式表示はANT-105号。20基(匹)製造された。
内10基は当初宇宙船の外壁や、居住棟の地面に使う月での岩石採掘に活躍した。
岩石の採掘は月の赤道近くの静かな海で採掘することになった。この場所は広く開けており、しかも、加工した岩石を月の軌道に打ち上げるのに都合がいい場所である。
岩石は地下で採掘され、地下にある石工工場で加工して地上のカタパルトで月軌道まで飛ばされる仕組みである。
月の軌道に来た大型の岩石には、小型ブースターを付けて地球軌道にいる建造船まで運ぶのである。
船の外壁は全長4キロメートルもあるので、この外部のすべてを月の岩石で覆いつくすのであるから、アリロボは月で岩石を採掘して、しかも外壁材としての加工を加えてから、カタパルトで宇宙に投げ出し宇宙船の建造現場に送り込む。
月で採掘するものは岩石だけではなく、燃料となる水も大量に必要になる。およそ430万立方メートル、25メートルプールおよそ1万個分の水を氷にして船の外部に張り付けるのである。
真っ黒な船体を氷が丸く覆い、太陽の光に当たると真珠のように輝く。その周りには氷から溶け出した蒸気によって七色の虹が輝く幻想的な宇宙船になる。
このアリロボは旅の途中燃料が不足すれば隕石や惑星から氷を採取して、居住空間の酸素や船の燃料を確保する重要な役割を果たすことになる。
船が完成した後は、船外の氷の管理や、船内の結露から氷となった塊を取り除いたり、船内地面の補修などを行なったりする。
このアリロボの目は赤外線になっており暗闇の中でも活動できる。月面や宇宙船の船外で動き回るアリロボの赤い目が列をなして動き回る光景は、いつまで見ていても飽きない面白さである。
船内掃除はこのアリロボの他にも、フンコロガシロボが土地や草木の面倒を見て環境保全を行なう。
通称フンコロガシロボ、正式表示はBO-350号、船内の整理整頓係で10基(匹)製造され、特に居住空間内の地面の耕しや草やゴミをかき集める環境ロボである。
船の中のすべてのゴミはもれなく再利用が原則である。いかなるゴミも捨てられることもなく焼却されることもない。循環再利用資源となる。
地球でのフンコロガシは、サハラ砂漠のような環境の中でもわずかな食糧で何か月も生き残る昆虫である。
宇宙船の中も砂漠と同じで、ごく限られた物資をリサイクルしなくてはならない。まさに砂漠に生きる、フンコロガシのようなたくましさが要求される。