金原との出会い
翌日のお昼過ぎ、正嗣はGHのロゴマークを印刷した紙を持ちマニラ国際空港のアライバル・ミーティングポイントで金原を待っていた。金原の乗ったフライトはオンタイムで着いた。空港へは会社の車で来ていたが、ドライバーのロペも車をパーキングに止め正嗣の隣にやって来た。
ロペは金原の顔を知っているとのことなので、一緒に待つことにした。フライト着後五〇分くらい経った頃、大きなスーツケースを転がしながら金原が出てきた。ロペが手を振ったので、金原もそれに気づいたようだ。
「お疲れ様でした」
「お疲れ。君が晝間君だね」
「はい。初めまして」と言って金原に会釈した。
「この国の入国審査は相変わらず時間がかかるね。イミグレすごい列だったよ」
三人で車の止めてある所まで歩くのが一番早いのだろうが、スーツケースがあまりに重かったので、ロペに車を回してもらうことにし、二階の車寄せで待つことにする。
「マレーシアと比べて暑いですか」
「同じようなもんだけど、マニラの方が暑く感じるね」
「寮に荷物を置いて、会社へ向かえばよいですね。一○ヵ月ぶりなんですよね」
「うん。こんなに早くもどってこられるとは思っていなかったけどね。一応希望は出しといたんだ。寮は変わってないよね」
「ええ、同じです。マレーシアよりフィリピンの方がいいですか」
「こっちの方が人間関係が楽なんだよね」
「向こうは宗教の関係でしょうけど、お酒飲んで遊べる所があまりないんですか」
「確かにそういうイメージだけど、ちゃんとあるよ。でも、マニラの方が何でもあって楽しいよね」
そんな話をしている間に車が来た。予定通り、正嗣は寮に寄り荷物を置いた後、金原を会社へ連れていった。
その日の金原の言動から、丈の言っていたような人物像とは違い、どこにでもいそうな平均的日本人男性に見えた。金原は長く離れていたわけではないのですんなりと会社の業務の流れに入ることができ、幾世との仕事の引き継ぎも順調に進んだ。
その週の金曜日の晩に幾世の送別会と金原の歓迎会がミッドランドラムタラホテルの『ロータスガーデン』というチャイニーズ・レストランで行われた。その後は例によってマビニ通りのカラオケラウンジで二次会となった。