いずれにしても、この種の国際イニシアチブは、いわゆる法律に基づく規制のようなものではなく、目標設定などに一定の基準や目安はあるものの各企業が自主的に自由に目標を設定し、その目標達成に向けた活動状況を随時モニタリングし、積極的にその結果を公表していくことです。このあたりの対外的アピール重視の企業マインドは、日本企業が最も苦手としているところかもしれませんが。
今後、本格的な脱炭素化・カーボンニュートラルを推進していく企業には、ぜひともこのEP100宣言を通じて、自らの企業体を筋肉質にしていくことを強く推奨したいものです。特に、エネルギー生産性を2倍にするという目標を掲げつつ、その確実な達成に向けた社内管理体制を構築する上でも全社的なエネルギー管理システム(EnMS)の導入をすること、つまり前述したEP100の①項と②項を同時に実施していくことが望ましいでしょう。
さらに、一部の自社保有施設をZEB化していくことができれば最優秀のEP100宣言企業となり、ESG投資家からも高い評価を得られるのではないでしょうか。また、エネルギー生産性(EP:Energy Productivity)を向上させる活動というのは、単なる省エネルギー・エネルギー効率化活動とは次元が異なり、そのエネルギー生産性指標を経営陣が常に管理していくインセンティブがあります。
前述したようにEP算定式の分子が売上、利益、付加価値などの事業活動に直結した指標で、分母はその活動に要したエネルギー消費量であり、このEP指標を少なくとも月次ベースで確認、管理していくことは、売上や利益の会計・経理上の管理と同様に、経営者の最大の関心事の一つとなることでしょう。
さらに、近い将来には、このエネルギー生産性に加えて、その兄弟指標でもある炭素生産性(CP:Carbon Productivity)をも経営指標として管理せざるを得ない状況になるはずです。むしろ、最初からEPとCPを同時に管理していくことが良いかもしれません。
企業経営者が同業他社よりもいち早くこのようなエネルギー生産性や炭素生産性をしっかり管理できる体制を構築し、その改善を経営のKPI(Key Performanc Indicator:重要業績評価指標)の一つとして捉えることができた企業が、2050年のカーボンニュートラルな世界で生き残っていける企業になることは間違いありません。