殿様蛙がおやつ代わりに

学校から帰ってきてもおやつなどはなく、空きっ腹を抱えてお寺の裏の池に行って殿様蛙を取ってきた。ナイフで解剖して皮を剝ぎ臓物を捨て、枯葉を集めて火をつけ焼いて塩を振りかけて食べた。

イカのような味がしてうまく、蛙がおやつ代わりになって飢えを和らげてくれた。

風呂は順番にお寺の近所の農家へ行ってもらい湯をした。

六年生の女の子が二人の三年生を連れていき一緒に入浴をした。

女の子は栄養不良のせいか瘦せていてオッパイもつぼみのように小さかった。股のところには薄く産毛のようなものが生えていたが女の子は恥じらいもなく隠そうともしなかった。

広島の実家でも弟と一緒に風呂に入って洗ってやっていたのかもしれない。

風呂は池の水を汲み取ってきて沸かしたもので、木の葉や虫の死骸やごみが浮いていた。お湯はぬるくて汚れていて、気持ちが悪かった。

母が送ってくれたキャラメル

そんな惨めな学童疎開の日々だったが、ある日、広島にいるMの母から森永キャラメルの黄色い箱が二つ、送られてきた。

そのなかに添付されていた手紙には「先生に見せて、みんなで分けて食べるように」と記されていた。

Mは先生に渡すと、みんな取られてしまうような予感がして、一箱は残し、一箱だけ渡した。

案の定、その日の夜、お寺の庫裏に集まった先生たちが、その席でMが渡したキャラメルを配って舐めているのを見た。