保繁は馬に乗ると龍神守の里を目指した。
その頃、羅技達は神殿の前に来ていた。
「私共は神殿へ入ってはならぬと和清様よりきつく言われておりますが……」
「我について参れ!」
羅技を先頭にして神殿の中へ入ると、祭壇の前に清姫、紗久弥姫と下女の二人が和清に寄り添う様に座っていた。
「全て事は終えたか?」
羅技は和清の前に座ると両の手を床に付け、頭を深く下げた。
「はい! 父上。里人達には食糧倉に在る全てを持たせ、馬も全部里人に与えました。全ての里人達が橋を渡り終えた後、我が橋の留め綱を切り、家臣達が橋を落としました」
和清は満面の笑みを見せた。
「よくやった!」
「父上の許しも得ず、我の一存で宝物倉を焼き払ってしまいました。中には父上の大事な物が入っているのを承知で申し訳ありません」
羅技が再び床に手を付けて深々を頭を下げると、
「面をあげよ。当たり前の事をしてくれた! 阿修の者等に一品たりと渡してなるものか」
と、和清は頭を優しく撫でた。