SLOW LIFE

※ 投稿者  望まない部署に配属された、次期課長候補 四三歳

僕には 主義・主張なんて特にない

何か明確な信念や哲学に沿って 日々行動しているわけでもない

現在の仕事だってそう 生活のかてのために 仕方なくやっているだけで

とりあえず 次の週末は 家でのんびり過ごしたいという

目先の“生きる目標”しかもっていない

僕には 野心や大志なんて特にない

上司の命令に異を唱える勇気がないから 社内での評判が気になるから 会社の忠実な手足となって 過労でダウンする一歩手前まで あくせく働いているけど

手帳が予定で埋まっているのは せかされているようで 本当は好きじゃない

出世欲もないのに 今じゃ中間管理職になってしまった 責任感だけで何とか務めているけど もうへとへとだ

「君が何をしたいのか どうしたいのかが大切だ 君自身のビジョンを示せ」

と よく上司から説教されるが 職場を改革したいとか思っていないし やりたいこともアイデアもない

面倒臭いから全て「前例踏襲」でいい 残業なんかせずに 早く家に帰りたいんだ

僕には 際立った個性や魅力なんて特にない

巧みな話術と 話題の多彩さと 周囲を魅了する強烈なキャラクターで 場を盛り上げている○○や△△(実名は伏せる)みたいになりたいな

僕は 飲み会ではいつも 後輩や上司の悪口ばかり言っている

それ以外では話が弾まないのだ しばらくすると会話が途切れ 気まずい沈黙が続く 他に話したいことが思い浮かばなくて困る

そもそも僕の話なんて 誰も聴きたいと思っちゃいないし  仕事の必要上 合わせているだけさ

「僕にしかできないこと」なんて特にない

これまで テストで一番を取ったことも スポーツで賞を取ったこともない

この社会にとって 何も大きなことをせずに 死んでいくだけだ こんな平凡な男の人生に 何かしらの意味などあるのだろうか

そんな疑問すら浮かんでこないほどに  今日という日が とりあえず終わればいいと思って 忙しさに流されて過ごしている

この世界は そんな“名もなき大衆”の部品で成り立っている

そうやって このつまらない人生を正当化している