不登校生活を満喫した少年の行く先とは…
それから。一カ月ぐらい、おかんが毎朝学校の最寄り駅まで送ってくれて、俺もだんだん高校生活になじんできて、そのあとは一人で学校へ行けるようになった。なんか、学校のみんなも昔不登校やったり、学校でいじめられてたり、という奴が多くて、俺と同じやった。なんとなく、みんなの中に居ても疎外感がない。一人でいても、心地いい。
その後、俺はほぼ学校を休まず、毎日通った。マンガコースを選んで、毎日マンガを描いた。周りの奴らは半端なくみんな上手い。そいつらが、マンガを描くときのコツとかいろいろ教えてくれて、俺もみるみる上達した。気が付いたら、大学でもマンガをもっと学びたい、と思ってた。
目標ができたら、頑張れる。大学入試の勉強も、今までにないぐらい頑張った。試験当日も頑張り過ぎて、手が腱鞘炎になったくらい。そして、第一志望の大学に合格したんやな。
で、相変わらず俺は毎日マンガを描いてる。周りのやつらも、俺の不登校時代を知ってるけど、別に、
「ああ、そうやったん」
ていうぐらいの感じ。誰も気にしてない。
そんなわけで、俺は不登校になって実は良かったんかも。自分がやりたいことが何か、とかいろんなことに気づけたし。何より、自分の好きなことを思う存分楽しむ時間が得られたのは、ほんまにありがたかった。そっから、自分の進む道を見つけることができた。普通に学校行ってたら、勉強や部活に追われて、そんなことを考える暇なんてなかったかも。
不登校時代は、俺にとって黒歴史や、とずっと思ってたけど、今振り返ってみると、ちょっと違うかも。実は意外と、不登校時代も楽しかった。そんな不登校時代の俺にあこがれている下のきょうだいたちを見て、おかんは苦笑してるけど。
まあ、人それぞれいろんな歴史、人生があって、みんなそれって違っててええんや、ということに気づけたのは、最大の収穫やったかもな。不登校になって良かったと、今の自分なら思えるで。