本稿で提唱する「PBCグラフ」について
(5)「BS内移動」とは?
研究生:棒グラフの「BS内移動」は、どんな内容のものですか?
教 授:PBCグラフは、期首の「現預金」残高と、期末の「現預金」残高の間の「一年間」のキャッシュの動きを把握するためのグラフです。
・これまで説明してきた(1)~(4)などの動きを「把握」した以外に、「売掛・買掛」や「未収・未払」、「仮受・仮払」など、B/S項目の年度をまたぐ資金の移動状況や、P/L計上されなかったキャッシュの把握を、現預金残高との「差額」で金額を一致させるために「表現」したものが、「BS内移動」です。
・真ん中の棒グラフに「BS内移動」が発生する例として、前期末の「売掛金」が今期に入金されたことなどが挙げられます。右側の棒グラフに「BS内移動」が発生する例としては、今期末の「売掛金」は、来期に入金予定である場合などです。
・これら、正確な内訳は追跡が複雑なので、大ざっぱに言えば、年度をまたぐB/S項目で、「今期は現金入金が多い」のか(真ん中の棒グラフに表示)、それとも、「今期は現金出金が多い」あるいは「来期の入金待ち」なのか(右側の棒グラフに表示)を表示する項目になっています。
・また、直近期において、「償却資産」が増加しています。このテスト入力のケースでは、B/S「有形固定資産」の増加ではなく、「繰延資産」の増加であることが分かります。これもB/S内移動(キャッシュアウト)です。
・「繰延資産」は、新商品の「開発費」など、単年度に支出した費用を5年間など一定の事後期間に(後払いのように)P/Lに経費計上するものであり、会計上認められていますが、固定資産(機械や車両など)と違い、現物の「カタチ」がないので注意が必要かもしれません(単年度P/L赤字を避けるために、B/S計上に振り替えたのでは?)。
・シンプルなグラフにしなければ表現が困難なため、「差額」を「B/S内移動」で一括りにする、という手法を取っています。CF計算書の「営業・投資・財務活動」の分類とは異なるキャッシュ理解のアプローチであることをご理解下さい。
いかがでしょうか?
・期末「残高の推移」だけでなく、「期中の動き」も補足することで、現金の動きの「ストーリー性」を表現(可視化)するのが、この「PBC表」&「PBCグラフ」なのです。
※「特別損失」で、棚卸資産等の「除去損」「売却損」を計上した場合、PBC表&グラフの「他費用・損失」欄でグラフ表示します。この際、左側のP/Lグラフはそのままで良いのですが、右側の「CF出」ではキャッシュアウトしないので、その額は手入力で減額が必要です。
(調整もれがあった場合、「BS内移動」で差額を入力することになります。)