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患者へのアドバイスの伝え方
私はかかりつけ医として、慢性疾患を抱えていたり、いくつも薬を飲んでいる患者さんを長年診ています。かかりつけ医の仕事は、単に診察や処方を行うだけではなく、健康相談や生活指導なども重要な仕事になっています。
指導事項として頻度の高いものは、高血圧・高脂血症・糖尿病のメタボ疾患を持つ方に生活上のアドバイスをしたり、長期間睡眠薬や痛み止めを飲んでいる方に薬の減量や中止をすすめたりすることです。
具体的には、「間食は少し控えて」「アルコールを飲まない休肝日を作りましょう」「タバコの本数を減らしましょう」などと、医学的に適切ですが、常識としても広く知られているようなことが多く、相手も聞き飽きていると思われます。
診察時には、「はい、わかりました」と一応肯定的に返事してもらうことが多いですが、実際は、反応が薄い聞き流しや、「来客があって飲むことが多かったので」など言い訳も聞かれます。
患者さんにしてみれば、今まで何十年も続けてきた生活習慣を、急に変えろと言われても難しいことでしょう。とは言っても、こちらもかかりつけ医としての責任上、病気が改善しないのはともかく、悪化してしまうのを、ただ手をこまねいて見ているわけにもいきません。
私も、「どうすれば説得力があるかな」と考えてみて、専門の機関や専門のドクターから得た知識であることを枕詞に使うようにしてみました。
「厚労省の発表では、高齢者が睡眠薬を長期的に使うのは良くないようですよ。必要な時だけにしていくほうがおすすめです」
「痛みの専門医が先日勉強会で言っていましたが、痛み止めはずっと使うとだんだん効かなくなってきます」
私としては、専門ドクターからの、実験や臨床でのエビデンスのあるアドバイスなので、具体的で信ぴょう性が高く、おすすめ度も高くなっているつもりです。でも、患者さんの反応は今一つというところでしょうか。
それに比べると、私自身や家族、知り合いを引き合いに出すのは、結構効果的です。
高齢の患者さんが軽い不眠を訴えた場合、
「私もそうですよ。年を取ることが不眠のいちばんの原因なので、若い時のようには続けて眠れません。1日5〜6時間眠れれば、大丈夫です」
と様子を見てもらいます。
また、何かの疾患を疑い専門医受診をすすめる際にも、「私の親なら、やはり一度受診して詳しく調べてもらうことをすすめます」。
すると、目の前にいるドクターやその家族もそうなら、と患者さんやその家族にも結構納得してもらえます。