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第5章 相続、再び
私達は相手側の弁護士より遅れて退出した。姉と相手側の弁護士とのやりとりは、私の離婚調停の時とは違ったもので雄二は初めて見るものだったので、お互い何も言葉にすることができないまま、心の中で驚いていた。
そんな状況を見た姉は、午後1時に姉の法律事務所へ2人で来るように言った後、次の依頼人に会うため裁判所から離れていった。
私達は自宅に戻ると約束の時間に遅れるので、事務所の近所にあるファミリーレストランで昼食を済ませるため裁判所を離れた。食事中に私達は、お互い調停の場所で行われた両方の主張についての感想などを、話し合いながら時間を調節した。
約束の時間に法律事務所へ訪問すると、姉は応接室に案内してくれた後、私に質問してきた。
「ひろみ、愛人の江藤金子さんはあなた達の家族構成とか本当に知らなかったの? 相手側の弁護士の言動など観察していると、光夫さんから詳細な事を十分に聞かされていたから、光夫さんが死亡した時、わざとこっち側に連絡してこなかったような予感がするのだけど」
「私が最後に元夫と会ったのは、この事務所の応接室で直美の遺産相続の手続きをした時よ。それ以降は連絡もとっていないし、子供達も連絡なんか絶対してないわよね。雄二」
「伯母さん、あんな男に直美姉さんの死亡の連絡をするのも、母さんにやめておけと提案したくらいですから連絡なんて絶対しません!」
「そうなの。けど相手側の態度を観察していたら、遺産相続のやり直しに関して決して行われる事がないみたいな自信がはっきりと分かったから、何か秘策があるのではないかと思えて嫌な予感がするのよ。弁護士の勘だけどね」
そのあとは、今回の調停の内容について丁寧に教えてもらった。雄二は全部理解できたみたいだったが、私は半分程度しか理解できなかった。
だけど、今回の調停に関して当事者ではないので、雄二が理解できればそれでいいと思い黙っていた。
それから3週間ほど経過して、調停の第2回目が開催される日の朝になった。