真っ赤な花瓶だった。達郎は、それを手に取ると、念入りに見回した。確かに、智子がもらってきたような気もする。首を捻りながら、

「智子がもらってきたような気もしますが……僕はこっちには持って来ていません。多分、智子の実家の方にあると思いますよ……これが何か……」

達郎は、何を捜索しているのか心配でならなかった。

「ある詐欺事件ですよ」

大東が言った。捜査の対象者からそう尋ねられた時には、全ての人に詐欺事件の捜査だと答えた。縁起物の引き出物が殺人事件に絡んでいるとなると、千葉夫妻に気の毒であるとの配慮からだった。

詐欺事件か、良かった。そりゃ、そうだろう。今頃、あの殺害がばれるはずがない。

達郎は、悟られないように胸を撫で下ろした。

「どうも、お休み中のところ、お手間を取らせました」

と言って、二人の刑事は帰って行った。