みどりはあいかわらず距離感の達人で、柴田くんたちのグループと仲良くしつつも深いところまでは入り込まない。クラス名簿を作ろうという話になったときも、彼らが梅原くんの家で編集作業をするという話は聞いていても、みどりと私は女子分の原稿集めに協力するだけ。それでも、智美と依子の次に彼らと仲のいい女子、という位置に私たちはいた。
智美は柴田くんをファーストネームで呼ぶ。依子は「彬くん」と「くん」をつける。依子のこういう上品さが好ましい。梅原くんが依子を好きで、そろそろ告白するだろうという噂があるのもうなずける。梅原くんはいつもふざけているけれど、根っこにある真面目さと優しさがにじみ出ている好青年だ。長い髪もよく似合っている。依子とうまくいくといいと思う。
先週のクラスコンパは、そのきっかけ作りのために柴田くんが企画した友情コンパだったらしいとみどりから聞いた。情報通のみどりは、クラスメイトの事情、特に恋愛事情をあれこれ拾ってきて教えてくれる。
柴田くんは、東京に年上の彼女がいるらしい。今週、柴田くんが必修の英語を欠席したのは、彼女のところに泊まっていたかららしい。本人に直接訊けるほど仲良くはないけれど、「らしい」という情報だけは入ってくる。
みどりに合わせている訳ではないけれど、私も自分から彼らの中に入ることはしなかった。智美と依子がいるし、一人では入りにくいということもあった。もう一つ、私は寮のことで忙しくしていたのだ。コンパも一次会で帰る。みどりの家にも何度か遊びに行ったけれど、夜が更ける前には寮に帰ることにしていた。