また、鳩が死んでいる
第二日。
昨日にくらべ陽ざしが弱い。出がけから外套を着る。
現地に着いて会社に上番報告をし、公園課に業務に入る旨、電話をした。
パトロールに入ると、また鳩が三羽下りてきて私のまわりを歩いていたが、今日は早目に諦めて飛び去った。
木製遊具のエリアへ行くと、裏の建物の影から黒っぽい猫が出てきて私を見つめてきた。しばらく私と猫はにらみ合った。やがて猫はゆっくりと植込みの奥へと入っていった。
ターンして基地の方へ戻ると、ベンチの傍に男が立っていた。私は急ぎ足で男のそばへ行った。
「おはようございます。何か?」
挨拶をしてみる。男はにらみつける様に私の全身をながめた。
「おう、ガードマン」
と怒鳴るように呼んだ。
「はい」
「てめえ、何をやってるんだ」
最初から喧嘩ごしだ。
「公園のパトロールですが」
「そんな事ァ見りゃァわかる。何でそんなパトロールなんかやってるんだ?」
「役所の公園課からの指示でして」
「公園課だと? 公園課がどんな指示を出したんだ」
「はァ、まァいろいろと」
「いろいろとだ? いい加減なことを言うんじゃねえぞ。ここにゃァ何もパトロールする様なことは無(ね)えんだ。ガードマンなんか雇いやがって、一日いくらか知らねえが税金のムダづかいだ。てめえの方から、この仕事はつとまりません、とか言って辞退するんだ。わかったか?」
「それは私の一存ではできません。役所と私の会社の契約ですから」
「じゃァ会社にてめえの方から言うんだ。住民から仕事を辞退するよう申し入れがあったってな」
何ともむちゃくちゃな話だ。私はもう聞き流すことにした。と、男の視線があわただしく動いた。
「目ざわりな野郎だ。よく考えとくんだな」
吐きすてるように言うと、裏へ抜けて公団住宅の方へと立ち去った。私はあっけにとられてその後姿を見送った。男の姿は一度消えたがまた現れ、公団住宅の右端の棟へ入っていったようだ。
昨日の老婆といい、不愉快な連中もけっこう住んでいる土地らしい。