実例 本質に近づいた方が有利になる―情報の厚みと精度の追及―
目的を達成するためには、情報収集力と分析力で競合他社を上回る必要があります。
サッカー界における情報収集
サッカーのトップレベルの国際試合においても全く同様です。
ワールドカップなどにおいて対戦国が決まった瞬間から対戦相手の数年前からの試合の映像を入手して分析します。また、対戦日までに行われる対戦相手の対外試合にも所謂スカウティング部隊を送り込み、場合によっては全体映像のみならず中心選手の個別の映像も撮影し、その後分析するのがサッカー界では普通のことになっています。
スカウティング部隊を送り込むときはホームチームのサッカー協会に申し入れ、許可を取ることになっていますが、サッカー界においてはこれらの申し入れはできるだけ受け入れましょうという暗黙の了解があり、さほど断られることはありません。
言わばスパイ合戦が公認されているようなものです。このスカウティングと分析能力は世界のトップクラスの国は非常に優れたノウハウを持っており、勝敗の行方を大きく左右します。
情報の厚みと精度が物を言う
ビジネスでも全く同じです。
私が40歳だった頃に経験した案件があります。それは日本のある業界団体が定期的に実施していた乳製品の入札にまつわる事例です。この入札は全体数量が大きいことで国際的にも知られていました。
入札日の一か月ぐらい前だったでしょうか。D国の乳製品メーカーで世界有数の取扱量を誇るB社より打診があり、実は工場在庫が溜まってしまっており、今回の入札で落札して一気に在庫を整理したいので協力してほしいというものでした。
大きなビジネスチャンスだと思った我々は早速情報収集に入りました。収集すべき情報は入札に参加する同業他社がどの程度の価格帯で入札してくるかを予想するための周辺情報です。
そのために通常メインプレーヤーであるヨーロッパのブローカーやメーカーに今度の入札にはどれぐらいの数量の製品をどのくらいの価格でオファーしてくれるか聞いて廻り、また同時に国際相場の需給バランス、相場が上に向いているのか下を向いているのか、誰が売り玉を沢山出してきそうか、などの情報をいつもよりも入念に収集しました。