施設に入ってもらえばどちらも楽で安心なのに、と私はアドバイスしますが、母親は頑として受け付けないようです。デイサービスに行ければまだ良いほうで、それさえ拒否して受け付けない場合があります。
「デイサービスに行けば、お風呂にも入れるし、お友達もできて楽しいですよ」
とご本人にすすめてみても、
「私は自分のしたいことで忙しいのです」
「そういうところは私には合いません」
と断り、
「息子が来てくれるので」
「息子が毎日電話してくれます」
などと、息子にべったりと頼り切っています。
息子さんには息子さんの家族や生活があるのでいい加減解放してあげたらよいのに、と私は思ってしまいますが、なかなか難しいようです。
息子も母親に優しい性分で、強くは言えないようで、諦め顔です。
世の中の高齢女性、特に親孝行な息子を持つ母親の皆さんに私は言いたいです。子供には子供の新しい所帯と人生があります。自分が年老いたら、少なくとも心理的に子供たちとは距離を置いて自分の余生を過ごしましょう。
著名な作家の曽野綾子もかつてベストセラーとなった『老いの才覚』で書いていました。
「老いの基本は『自立』と『自律』」
「子供の世話になることを期待しない」
と。
まさに同感ですが、もうすでに息子に頼り切っている年老いた母親に、今更考えを変えてもらうのは無理かもしれません。
このように年老いた母親と息子の間になかなか割り込めない息子の嫁ですが、母親の最期の時に意見が通る場合が結構あります。
母親の最期というシチュエーションに息子が耐え切れず、延命や病院での治療に関してどう決断すべきか自分の妻に相談する場合です。
傍観者の妻はここで、
「お母さんも十分長生きしたので、もういいんじゃないですか」
とあっさりとピリオドを打ちます。
高齢女性の皆さん、息子のお嫁さんを大事にして下さいね。