それでは、ここに挙げたような、メンタルの症状が強い高齢者と一緒に暮らしている場合にはどうすれば良いでしょうか? 家族の1人だけを悪く思っており、態度もきつい場合には、私はターゲットとなっている家族に、できるだけ離れて過ごすことを勧めています。家でいる部屋を別々にしたり、どちらかの人の外出を多くして一緒にいる時間をできるだけ少なくしたり、というふうに。

高齢者の場合には、デイサービスやショートステイを使うことで、残りの家族が休息を与えられたり、出かけた本人も気分転換になって良い効果が期待できます。さらに、高齢者の言動に家族が精神的に耐えられない場合には、精神科を受診させて抗精神病薬を調整してもらったり、高齢者を施設に入れて家族が解放されることを検討してもらいます。

やっかいなことに、本人は自分の精神的な問題だとはまったく思っていないことが多いので、精神科受診を拒否しがちですし、抗精神病薬を処方されても、「毒を盛られている」「この薬を飲むと調子が悪くなる」と拒否したりします。

以上挙げたように、高齢になってメンタルな症状が強く出てくる人は、認知症のメンタルな症状が出ているだけではなく、もともとメンタルに固有の気質がある場合も多いようです。

ご家族に昔の話を伺うと、「昔からこだわりが強い性格です」と教えてもらったり、精神科に通院または入院歴があったりします。

精神症状が強くて家族や周囲につらく当たる場合、自分たちだけで解決しようとせず、認知症に詳しい医師やケアマネージャー、地域包括支援センターや市役所などの公的な機関に相談し、アドバイスをしてもらうのが良いと思います。また2〜3年経って高齢者の認知症がさらに進めば、逆に穏やかになって対応しやすくなるように、時が解決してくれることもあります。