盛んな習熟度別指導
日本では、習熟の程度に応じた指導によって教育効果が高まると言われる一方で、学業成績で分けるのは差別だ、成績下位の生徒に劣等感を植えつける、上位の生徒のやる気を失わせるなどといった批判がある。学力の低い生徒ばかり集まると授業が成り立たなくなるという人もいる。
オーストラリアでもそうした声がないわけではない。保護者の中にもこうした方法を好まない人もいる。だが、習熟度別クラスは総合的な学力や能力で分けるのではなく、個々の教科の理解度や習得の速さによって分けるものだ。ある教科では習得が早いが、別の教科では遅いということはいくらでもある。早いから優れている、遅いから劣っているということでもない。進路希望も加味される。
だから、クラスの名称も、優劣を表す言葉ではなく、一般コース、基礎コース、アカデミーコース、方法論コース、実践コースなど内容を表す言葉が多く使われている。習熟度別指導は子どもを学力によって差別するものではないという認識は、日本よりオーストラリアの方が強いように感じる。
効果を重視する声も多い。オーストラリアの教師と話していると、特定の教科について「理解力がある」「よくできる」などと言うことはあっても、学習全般について言うことはあまりないことに気づく。
どの教科にも秀でた生徒というのはそうたくさんはいないからだろう。また、「かしこい(smart)」などという肯定的な言葉はよく耳にするが、「頭が悪い」とか「勉強ができない」といった否定的な言葉はあまり聞かない。
他の生徒と比べることもない。学習は個人的な行為であり、他と比較するものではないからだ。習熟度別授業が広く行われる理由もそのあたりにもあるのかもしれない。カリキュラムで学校の特色を出すカリキュラムの実施が学校に委ねられているので、カリキュラムで学校の特色を出すことができる。
特色あるカリキュラムは入学希望者の増加につながり、学校経営にも大きく貢献する。各学校は、コミュニティで知恵を出し合い、外部機関とも連携して、特色あるカリキュラムの実施に努めている。例を紹介しよう。