2050年まで1億の人口を保つためには、累計で1714万人(年間平均34万人)、生産年齢人口(15~64歳)を維持するシナリオでは累計3233万人(年間平均65万人)もの移民が計算上必要となる。どうみても実現可能な施策ではない。
日本政府も決してこの現象を見逃していたわけではない。各省もそれぞれ対策をとってきた。1990年の「出生率1・57ショック」を受け、1994年に策定された子育て支援のエンゼルプランなどがそれである。しかし、2005年には出生率が1・26と過去最低となってしまった。お決まりの反省だが、国としての危機感と、それに対応する強力な実行力(場合によっては国民に苦痛を強いる)が伴ってなかったのである。
一方、先進国のスウェーデンでは出生率が1980年代に1・6人台にまで低下し、社会問題となった。政府は「エッと驚く」ような各種対策を国策として進めた。例えば、強力な財政支出、婚外子(結婚していないカップルの間に誕生した子供)に嫡出子と法的同等の立場を与える法制度改正などである。その結果、1990年代前半にスウェーデンの出生率は2人を超え、先進国で最高水準となった。
ものづくり産業の将来を考える上で、人口減少問題は決定的に深刻である。人口が半減することは単純に言えば、ものづくり産業数は半分以下、生産量も半分以下でよいことを意味する。
2060年に日本の人口は8000万人、2100年に5000万人となる。それでは移民はどうか? これは、永年の歴史から、日本人にとって心情的・政治的・警備的な面から受け入れ難く、精神的・物理的コストが大きすぎる。人口減の受け入れが、日本の選択肢となろう。
男性の平均寿命は81・41歳、女性の平均寿命は87・45歳(2020年)であるが、最頻死亡年齢(最も死ぬ人の多い年齢)は男性88歳、女性92歳となっている。つまり、日本では男女問わず、少なくとも80歳近くまで元気な人が多いと見て取れる。
一方、最も経験値を積んだ熟練労働者の定年は65歳で、退場させられている。健康寿命を延ばすためには働くことが一番、日本がやるべき政策は定年を廃止することだ。定年の無い欧米に、寝たきり老人は少ないという。生産年齢人口(15~64歳)の64歳は80歳に変更してもおかしくない。