Aさんは、独居高齢者ですが、1日に2回ヘルパーさんに来てケアをしてもらっています。親戚の人が隣の家に住んでいますが、日中は仕事があり、帰宅してから訪ねてくれます。
Aさんの認知症はかなり進行していて、他人との意思の疎通は困難なレベルです。
起きている時はニコニコと笑顔でよくしゃべりますが、意味はお互いに通じません。トイレは伝い歩きでほぼ自分で行きますが、時々失禁します。
Aさんは自分がデイサービスに出かけるのは嫌がるので、家にサービスを導入するようになりました。何人かのヘルパーさんが毎日順番に来ては、食事を作ったり、部屋を掃除したり、身体保清のケアをし、Aさんは相手が誰でも比較的スムーズにケアを受け入れます。
介護サービスがとてもうまく遂行できていて、私たちがいつ訪ねても部屋は綺麗に掃除されており、Aさんも清潔な服を着て、テーブルにちょこんと座っていました。
家族に直接介護されず、施設にも入らず、こんなに快適に自分の家で暮らせるなんて、と私には驚きでした。
穏やかで時間が止まったような日々が数ヵ月続きました。ところがある日、Aさんは部屋で倒れているところをヘルパーさんに発見されました。すぐさま病院に救急搬送され入院治療を受けましたが、3日後に死亡しました。ピンピンコロリの見本のような最期でした。
こういう最期は、希望してもなかなか実現しませんが、自分の家でできるだけ長く過ごすためには、「他人からのケアをスムーズに受け入れる」という資質が大切なようです。