初等教育にスムーズに移行できるよう、5歳児を対象とする就学準備教育が実施されている。義務教育とする州とそうでない州があるが、学校教育の一部という認識が強く、就学する子どもは増えている。

学校教育は初等教育6年間、中等教育6年間の計12年間。学年は1年生から12年生まで通して数える。以前は初等段階と中等段階の区切りが州ごとに違っていたが、現在は南オーストラリア州(初等7年間、中等5年間)以外すべて共通となっている。同州も2022年からは他州と同じになる。初等教育と中等教育を一貫して行う学校もある。

また、初等(ジュニア)、中等(ミドル)、高等(シニア)の3段階に区分する学校もある。中等教育は10年生までの前期中等段階と、11、12年生の後期中等段階に分かれる。高校入試はなく、12年生まで無試験で進級できる。15歳までが義務教育なので、かつては10年生の終了を待たず15歳になった時点で学業を終える生徒もいたが、今は少ない。

10年生を修了すると前期中等教育修了の資格が得られる。後期中等教育は高等教育への準備教育という位置づけで、希望する専攻分野に合わせて履修科目を選択する。学習内容は日本の大学の教養課程に近い。中等教育では職業教育も盛んだ。大学や専門学校、企業などと連携し、在学中に様々な資格が取得できるプログラムも実施されている。

12年生の終わりには卒業認定試験を受け、無事に修了すると証明書が発行される。名称は、Higher School Certificate(HSC)、Victorian Certificate of Education(VCE)など州によって異なるが、大学に進学する場合は必ず取得しなければならない。大学は全国に40校ある。日本に比べるとその数は圧倒的に少ない。ほとんどが公立(州立)で、私立は3校のみ。公立大学の予算は連邦政府が負担し、設立と運営は州政府が担うので、国立と州立の要素を兼ね備えている。

大学の多くは都市部に設置されており、地方には少ない。シドニー大学やメルボルン大学のように植民地時代からの歴史を持つ伝統大学と、1980年代の高等教育改革以降につくられた新大学がある。学部課程は特定の分野を除くと通常3年間で学士号が取得できる。

学士課程を優秀な成績で修了した者は、1年間の研究コースに進み、「オナーズ」という優等学位を取得することができる。大学院では修士、博士の学位の他、グラデュエートディプロマやグラデュエートサーティフィケートなど大学院レベルの資格も取得できる。

大学以外の高等教育機関として職業教育を行うテイフ(Technical and Further Education:TAFE)がある。テイフは州政府が管轄しており、多様な職業専門コースを設定している。実務的な教育を行い、実社会で役立つ様々な資格を取得することができる。大学に編入することも可能だ。