財源の検討1 予算の振替え

BIが社会的に必要で、適切な施策だとしても、BIに必要な巨額の財源をどう捻出するかは大きな課題である。

慶應義塾大学名誉教授でパソナグループ会長の竹中平蔵が2020年9月に提案した月額一人7万円のBIは、年金や健康保険等の保険料と国庫負担、地方税、年金積立金の運用益等で賄っている年間約120兆円の社会保障財源を充てるというものである(『ポストコロナの「日本改造計画」デジタル資本主義で強者となるビジョン』竹中平蔵PHP研究所 2020年)。

ネット上では、他の社会保障の廃止はけしからんとか、その給付水準では暮らしていけないとか物議をかもしたが、竹中は、その額では現在、年金だけで生活している人にとっては足りないという意見も出てくるとし、それに対しては別の解決策を考える必要が生じるかもしれないとも述べている。

前提として、現状のサービスの現物給付は、商業的に成り立たなくても存在すべきものであるし、引き続き改善すべきものであるから、私は原則として現物給付をスクラップしてBIをビルドするという考え方には与しない。

また、公的年金保険制度も維持する立場をとるが、これについては後述する。

さて、これからBI予算として財源を確保するための具体的な検討を示したいと思うが、その試算を合計すると、確保できる財源は表に示すように52.8兆円~131.7兆円となり、前述の給付額の試算に対して、近からずとも遠からずといえるのではないか。

またBIによる総需要の押し上げ効果によって、景気が良くなれば、法人税や所得税の増収も期待できる。さらに国債費に充てられている20兆円以上の財源は、財政再建が進めばBIの財源に充当することも可能であろう。

まず、税負担を大きくすることなく、現物給付や年金制度は維持できる範囲で、現行制度での支出の削減による予算の振替えから取りかかってみよう。

2020年度予算における児童手当1.3兆円はBIに置き換えるとともに、住宅扶助を別途措置することを前提として生活保護2.8兆円をBIに振り替えるならば、この二つで約4兆円確保できる。

もう少し詳しく見ると、2016年実績では、生活扶助1.2兆円(32.4%)、医療扶助1.7兆円(48.0%)、住宅扶助0.6兆円(16.3%)、その他0.1兆円(3.3%)であり、これらの給付費3.7兆円を国費2.8兆円、地方0.9兆円でカバーしている。