山本さん編
その週末、企業会があって僕たちのグループも例年通り、招待があり参加した。
「山本社長、ご参加頂きありがとうございます」
毎年企業の代表が参加する親睦会だ。
「私共本社より紹介、ありがとうございます」
「石川頭取、この企業で派手でなく、信用で仕事をしている社長を紹介していただけませんか。長い間、お付き合いできる社長を」
「山本社長、いらっしゃいますよ。信用が厚い社長が。そのグループに入りたがっている人はたくさんいるそうです。どの銀行もその社長の紹介であれば大丈夫と話は聞いています。専務はじめ、創業以来社員が一人もやめていないです。入社したい人も多いそうです。起業して二十年になります」
「素晴らしいです。社員を大切にしているのですね。ぜひ、紹介していただけますか」
「えぇ、どうぞ、こちらへ」
「今井社長、少しいいですか」
「はい」
振り向いた彼が、「おおー山本さん」。
「あっ、今井さん!」石川頭取は驚いている。
「お知り合いなんですか。さすが今井社長」握手をした。
「こないだ、一緒だった近藤です」
「その節は色々ありがとうございました」
「やはり縁があるんですね」
「鈴木社長のデパートに出店が決まりまして、今年から参加することになりました」
「エーライズデパートですか。僕達といつも一緒の仲間ですよ。今日は一時間程遅れると連絡がありました」
「ええ、聞いています」
「今井社長、少しいいですか」
別の銀行の頭取らしき方が今井さんに声をかけている。
「山本さん、失礼します。すぐ戻ります」
近藤さんと山本さんの会話
「今井はいつも忙しい人ですよ。山本さん、僕はゆりワールドのファンですが、ゆりさんの写メ見ますか。僕は、イライラしたり、疲れたりすると見る動画です。あの、ふんわりしたゆりさんです。ファンクラブがあります」
「ぜひ、見せてください」
「サッカー編、ラクビー編、野球編があります」
携帯を山本さんに渡した。
「奥さん、すごいなぁ」と言って大笑いしています。
「近藤さん、僕も入会したいです。僕にもメールでいただけませんか」
「ええ、受付いたします。会員番号二番です」
「嬉しい。二番ですね。あまり知られたくないですね」
「最近、裕太が、いえ、中条君が気付きはじめているので、会員番号三番になりそうです。中条君は、今井と僕が弟のようにかわいがっているのです。三つ下で人を裏切らないやつです。建築会社の二代目で、後で紹介します。真面目に一生懸命仕事するので、気が合います」
「ええ、ぜひ紹介してください」今井が戻って来た。
「山本さん、すみません。ぜひ、これからも長いお付き合いお願いいたします」
「こちらこそ、ファンクラブにも入りましたので何度か来ます」
「何か入会したのですね。会う機会が多い方が嬉しいです」
「奥様は、元気ですか」
「おかげ様で僕より元気です。パワーがすごいです」
「アハハハ。今、近藤さんから写メを見せてもらいました。本当に面白い奥様ですね」
「よくよく考えてみたら僕が妻に振り回されています。おかげで毎日が幸せです」
「山本さん、今井がのろけ話をするのが、不思議です。女性はほとんど、遊びでしたからね」
「そうだったかな~」三人で大笑い。