持ち主不明の住宅
持ち主が不明、実質的には持ち主がいない住宅はその管理が行われないことから荒れ放題になり、まちの安全の上からも景観の上からも好ましくない。
また区画整理などを行うときに1軒でもこのような住宅があると、このために変更や遅れが生じ社会的なコストが増大する。
しかし今の我が国の法体系や世論のもとでは現実にこれを解消する有効な手立てがなく、放置されたままでさらに状況を悪化させている。持ち主が不明になる理由には以下のようなことがある。
1.資産価値がゼロか極めて小さいもので、持ち主が死亡しても相続が行われず、それが何代も続き誰が所有者かわからなくなっている
2.所有者が決まっていてもそのようなものを固定資産税や管理費用を負担してまで持ち続けたいと思わないので、所有しているという意識を持たない。またそのような所有者を見つけ出すのがむずかしい
3.相続しても登記は義務でないので、上記のような状態が続く。これは法体系の不備ともいえる
4.データベースの一元化がなされていない。法務省の管理する不動産登記情報と、自治体が管理する固定資産税徴収のための情報が連動されていない。さらにはせっかく導入されたマイナンバーカードとの連携もされていない
これらはいずれも簡単に解決できるものではない。だから行政も、また近隣の住民もトラブルなどが発生しなければ放置したままにしておく、というのが現状である。そしてこれらの家は持ち主が判明している場合でも、持ち主の多くは何らかの形で処分したいと考えている。しかし売れれば良いのだが買い手がなかなか見つからないのが現状である。
国や地方自治体に寄付をしたい、あるいは相続時に現物納付したくとも普通はなかなか受け付けてもらえない。現在大半の市区町村では、土地や建物の寄付の申し入れがあっても、自治体に明確な使用目的がない限り受け入れはしていないそうだ。
維持管理の費用が出せず、管理する要員もいないためと聞く。今や自治体財政はそこまで追い込まれているようだ。しかし、国や地方自治体は、寄付に対し積極的に受け入れるべきである。とりあえず数年間でも、国有・公有財産として保有しておいてほしい。