謎の訪問者、目的は?
「名前は山川レナです。この子は遙太て言います。二歳になったばっかり。ホントはお祖母ちゃん、ハルって言うんですけど、そのハルお祖母ちゃんがここで暮らすようになっていたと聞いてたんですけど、一か月くらい前に足を骨折して施設に行くことになったから。うちが代わりに来たんです。すみません。ここしか行くところがなくて」
レナは鼻をすすりながら、飽きてきたのか擦り寄る遙太を膝に抱き上げた。
そろそろ、そのハルさんがここに来る予定になっていたが連絡がないので、私は近いうちに電話をかけてみようと思っていたところだった。
ハルさんの怪我の状態が気になったが、ホームに入所できたのなら、それはそれで良かったのかもしれない。
「お祖母ちゃんの代わりって、ここはシニア専用のシェアハウスだから。若くても五十以上、まして子連れなんてどう考えても無理でしょ」
希美さんは、レナと遙太を交互に見ながら無理無理と手を振る。
和枝は七年前、希美さんは四年前にこの家にやってきた。いつしかここは、熟年専用の駆け込み寺みたいになっている。
「まあ、お茶飲み。ここまで子ども抱いてくるのは大変やったやろ」
和枝が冷やした麦茶を、レナに手渡した。
レナの膝から下りた子どもは子犬や子猫どころか、二十日鼠やフェレットみたいに、全く予想もつかない動きで部屋中を走り回っている。
希美さんの目が尖った。