小説 『毎度、天国飯店です』 【第6回】 竹村 和貢 サークル勧誘チラシの前で、『徒然草』を抱えた美人と出会った…。 天国飯店の定休日は毎週火曜日。アルバイト生四人で、月曜から土曜の間の五営業日を分担する。四人のうち誰か一人が二営業日に入る。その者以外の三人のうちの一人が日曜日に店に入る。日曜日は大学が休みなので、朝の十時から閉店の午後九時まで十一時間店に入ることになる。「ほな、俺、明日もバイトやさかい、おっちゃんに自分のこと話してみるわ。多分、おっちゃんも構へん言わはる思うねんけど」夏生は、「できない」とは思…
小説 『ヒミツのレクイエム』 【第20回】 氷満 圭一郎 自分は特別な使命を持っているんだ!…と友達に話したらヤバイ奴扱いされた…。 その日記は、十八歳の時、一九九八年の十月から書き始められ、その後数年間ほど付けられていたが、こまめに書いているのは最初の二年ほどで、次第に時々思い出したように記されるばかりとなり、しまいにフェードアウトし書くのをやめてしまった、という軌跡をたどっている。書きはじめの当時は高校三年、大学の受験勉強の真っ只中で、こんなことをしていて何になるという疑問から、人生への懐疑を日記に記すようになったようだ。…