子供ははじめに、日常の動きを他人に伝える基本的な言葉から覚える。家庭や学校で経験を積み、言葉の数は日に日に増え、それらが持つ意味合いが深まってくる。

「晴れる」という言葉を幼稚園児が聞くと、「太陽が出て天気がよい」というイメージを持つ。「気持ちが晴れ晴れ」とまでは想像しないだろう。

たまには自分を表現する言葉が少ないゆえに、「僕の心は晴れていないよ」とギリギリの考えから、詩的な言葉が飛びだすことはあるだろう。

子供の頭の中に、初心者のメルヘンがある。子供と話すと、初心者の初々しさから生まれる言葉に驚いたり、笑ったりして楽しい。

言葉が豊富な人は、概して物知りである。持っている世界が、言葉によって広がっている。自分の経験をいつも言葉に置き換えている人は、その世界を他人に伝えることができる。

貴重な経験を重ねても、言葉に置き換えて表現しないと、残念なことに、その経験は個人的な事柄にとどまり、消えてしまう。貴重なはずの経験も、他人に伝わって初めて貴重なものになる。

人は常に心の中で、言葉をつぶやいている。多くのつぶやきは、日常生活に関することだ。「お腹がすいた、疲れた、眠い」などが多く繰り返される。

それ以外のつぶやきは、感情的な不満、驚き、喜びの言葉だろう。その他に、友人知人に自分の考えを伝えるために、言葉選びをしている人も多いだろう。大人になるにつれ言葉は選ばれ、練られてくるはずだが、時としてそんな努力が面倒になってくることもある。

「終わりが近づいている」と感じると、捨てゼリフを言う人や、怒りの言葉だけをぶつける人も出てくる。ごく幼い子供には見られない。詩の心を持つ人と、そうでない人の生涯は大変違ってくる。

言葉の初心者であった子供は、みんな詩の心を持っていた。初心者はすべてが新鮮に映り、驚きを感じる。何を見ても楽しい。初めての経験。知ることの喜びを持っている。

「気持ちが晴れ晴れ」。

シンプルなこの一行から詩を始めることもできる。今は気持ちが晴れ晴れとしていなくても、この一行の文から始まり、自由に心を踊らせる。

すると詩の言葉に導かれて、気持ちが晴れてくるようだ。