問題は人材と組織が脆弱にも拘わらず、私の独断専行で行ったこと。そして、業績が落ち始めても意に介さず代行社長に本業を任せきりにしてしまったこと。組織が固まっていない中でサラリーマンにオーナー社長の代行をさせるのはかなり難しいという自覚がなかったこと。

三年間の空白の間、上野食品は本業を守るだけで次の手を打たずにいた状態に対し、私自身の危機感が希薄であったこと。それらについて、私自身は猛省しなければならなかった。

まさに「驕れる者は久しからず」の諺の通り、オーナー社長にありがちな慢心によるワンマン経営そのものであると今になって自戒している。

私が社長に復帰した当時、社内は前に私が雇った社員と代行社長が雇った新しい社員との間にコミュニケーションのギャップがあった。

無理もない。私の経営方針を理解せずに入社してきた社員たちは、当時バブルの真っ最中で土地も株も上昇して天井知らずで、景気が良いために浮足立っていた。

大企業も人手不足で、ましてや中小企業には募集しても人材は集まらず、上野食品もやむを得ず雇える人材は質にこだわらず採用していたのである。

毎朝、朝礼を行っていたが、以前は遅刻する人はほとんどいなかった。ところが、度々遅刻する者が現れた。また、終業時間になると仕事の途中で退社する者も出てきた。

明らかにモラルが下がっていた。代行社長と同期入社の取締部長との間にも確執があり、代行社長が部長に遠慮をして指導力を発揮できずにいて、社員の中には足元を見て自分勝手に仕事をしている者もいたのである。

私はオーナー企業である以上、私の経営理念を理解して私に従ってくれる人で会社を経営したいと考えていた。

そこで、話し合いにより、合わない社員には出て行ってもらうことにした。

三人ばかり辞めて行ったが、有難いことに私自身が採用した社員は一人を除いて残ってくれた。