返事を待たず俺はその場を離れた。あぁぁーダメだな、鈍い俺~、クソ!
平野が好意を持ってくれていることに全く気付かなかった。
結果として気を持たせるようなことをしてしまったんだろうか。
あいつら、わざわざこんな場を設けて、平野の応援してたのか。普段、口悪いけど、案外仲いいじゃん。やったことはエゲツナイけど。
どうする、俺。
サワに、申し訳ない。
とりあえず今、謝ろう。
部室に戻ると、ちょうどサワが雄大と医務室から戻ってきていた。スティックを支える右の人差し指の根元のところが破れたのだという。
「ちょっと張り切りすぎちゃって…(笑)」
「…ごめん」
「なんでシーナが謝るの」
「色々あって、サワにとばっちりが」
「なんだよ、色々って?」
雄大が、厳しい視線を向けてくる。
「いいから、お前には関係ねーよ」
「よくねーだろ。現にサワがケガしてんじゃん」
気まずい沈黙。
「手は、私がちょっと調子乗っちゃったから」
包帯を巻いた手で、サワが自分の頭をコツンとやった。
「大丈夫か、それ」
「全然、慣れっこ」
「それより、なんでとばっちりだよ?」
食い下がる雄大。
「平野が、俺とサワのこと勘違いして」
「お前、平野と付き合ってんの?」
「ちが! 付き合ってねーし」
サワが、顔を上げた。
「そっか、映画館?」
「そう、それ」
「何の話だ?」
雄大の頭の上にクエスチョンマークが。
「シーナ、モテるね」
「そんなんじゃない」