だから私も――まだプロットの段階だが、期待していた。取らぬ狸の皮算用なのは百も承知なのだが、テレビで由津木が演じる彼を早く見てみたい、とも思った。
「とにかく、だ。僕はこれを良いと思った。特に訂正する個所も見当たらない。それが僕の意見だ」
「助かったよ。ありがとう」
御巫に褒められることはそうそうない。私は素直に嬉しかった。照れ臭いのも相俟(あいま)ってこんな返しをしてしまったのだが、その事はちゃんと彼には伝わっていたようだ。
やはり学生時代からの付き合いは違うな、と感心していると来客を告げるチャイムが鳴った。この家の主は
「今日は来客が多いせいでゆっくり本も読めやしない」
と文句を言いながらも玄関へと足を向かわせた。
「やあ、久しぶり」
「由津木!」
「僕もいるよ」
「港(みなと)!」
来客は先程話題にした俳優の由津木と、ベンチャー企業を立ち上げた港だった。
「全く――これで都竹(つづき)も来たら完全に同窓会になってしまうじゃないか」
御巫が頭を抱えて溜め息を吐いた。都竹とは御巫の幼馴染で、今は警視正だ。キャリア組とは違いノンキャリアでの叩き上げだが実績は多く残している。
「どうしたんだいきなり。二人が一緒に来るなんて珍しいな」
私の言葉に港と由津木は顔を見合わせるとクスリと笑った。
「――何かまた企んでいるんじゃないだろうな」
ジロリと睨(にら)む御巫に肩を竦(すく)める由津木。やはり何かあるらしい。
「吉川(きっかわ)、今年で二十年だろう? 俺も今年で二十年なんだ。それで何か大きな企画をやりたくてな。港がスポンサーになってくれるらしいからお前が今書いている本をドラマか映画にしたいと思うんだ」
「はあ……それはまた」
「大きく出たな」
唖然とする私と溜め息を漏らす御巫。