小説 『夫 失格[注目連載ピックアップ]』 【第20回】 時亘 一肇 夫が2階に上がるたびに走る緊張感。少しずつ、少しずつ、荷物を運び出し、夫から離れる準備を進める…絶対に悟られてはいけない 【前回記事を読む】昼夜問わず怒鳴り続ける夫の声は、ご近所中に広まっていた。遂に家を離れる決心をし、行動することに…女性センターに電話すると、提携する弁護士さんを紹介してくれた。そして後日、その弁護士さんに会いに行った際、「離婚される気はありますか?」と聞かれたので「はい」と答えると、「では家を出ないといけません」と。離婚調停をするにあたり、同じ屋根の下で当事者同士が一緒に生活しているのはおかしい…
小説 『「その時、初雪が降った。」』 【第9回】 本城沙衣 「学校で…私が妊娠したとか…噂あるでしょ?」彼女は小さい声で呟いた。事実を知りたい。でも… 【前回の記事を読む】僕は自動販売機で温かい紅茶を買って渡した。それを受け取った彼女は、昼休み以降、初めて僕に向かって笑顔を見せてくれた「そっか」何となく理解はできた。しかし、東京にも親戚がいるのにと思うと、そこは理解し難かった。ただ、彼女の様子から、そのことを敢えて聞ける雰囲気でもなかった。また夕方近くの冷たい風が一筋吹いた。「あと……」「ん?」「もうひとつ……」少し時間を空けたと思うと、かなり…