必ずみつけて帰る

まもなく山岳隊二~三人が戻ったが、成果は得られなかった。

「実はですね、ご家族のご希望なんですが……」

すでに戻っていた者を含めると、そこには五~六人の山岳捜索隊がいた。

「みなさん、お疲れだと思うんで、私としては無理はしてほしくないんですが」

坂崎が消極的に話す。すかさずイオリが言う。

「弟が最後に見たかもしれない風景を、見てみたいんですよ」

「私、行きますよ」

父・良典と同じくらい、いや母・明純より少し上くらいの女性が口火を切った。すると次々、行く、大丈夫、と声が上がった。決定だった。

翌土曜日。火口前のレストハウス駐車場に七時半集合と決まった。

帰り、牧長パーキングで食事を摂った。良典・ヒョウゴ・イオリは牛タン定食を食べたが、明純は素うどんで良いと言った。それすら半分しか食べられず、イオリは残りのうどんを食べた。

柚葉区に住む祖父母、明純の実家のことも気にかかっていたが、昨日寄ったとのことで、今日はそのまま家に帰ることにした。土日いるつもりだから、また祖父母には会えるだろう。

翌土曜日、竹谷温泉コースと、左衛門小屋コース両方を明純は行ってほしかったようだが、行程的に一つしか選べなかった。明純以外竹谷温泉コースを選び、多数決で竹谷温泉コースとなった。

必ずみつけて帰る!

兄ヒョウゴも同じ気持ちに違いなかった。

同日夕方、祖父が緊急入院することをイオリはまだ知らなかった。