第一章 小樽 人生の転機は突然に
その夜から熱が上がり、息苦しさが一段と増した。とにかく胸が苦しかった。偶然かどうか父が乾いたタオルで胸を撫でるように擦ってくれたとき、少し呼吸が楽になったような気がした。
【関連記事】「出て行け=行かないで」では、数式が成立しない。
「父さん、ちょっと楽だよ」
「そうか」
父は疲れたせいか十分ほどでその手を休めた。なぜかまた苦しくなったようで、
「父さん、もう一回やって」
「分かった」
と言いながらまた胸を軽く擦り始めてくれた。そのうちに眠りについた。
大学生の伊庭克彦は、参加したスキー選手権大会で競技中の事故により脊椎を損傷し、四肢麻痺となった。
その後、ケースワーカーの勧めで「言語聴覚士」の研究生として学び始める。
苦労を重ねながらも目標や生きがいを見いだしていく男性を描いた小説を連載にてお届けします。
その夜から熱が上がり、息苦しさが一段と増した。とにかく胸が苦しかった。偶然かどうか父が乾いたタオルで胸を撫でるように擦ってくれたとき、少し呼吸が楽になったような気がした。
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「父さん、ちょっと楽だよ」
「そうか」
父は疲れたせいか十分ほどでその手を休めた。なぜかまた苦しくなったようで、
「父さん、もう一回やって」
「分かった」
と言いながらまた胸を軽く擦り始めてくれた。そのうちに眠りについた。