第二話 それぞれの挑戦 3
翼は休憩の間、2階席で三枝子と話をしている。
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「さっき、2種類のジャンプの跳び方も教わってたわね」
「6種類もあるんだよ」
「6種類もあるの?」
「うん、得点が低いところから言うと、トウループ、サルコウ、ループ、フリップ、ルッツそしてアクセル」
「ママはアクセルしかわからないわ。翼の得意のジャンプ」
「アクセルだけ正面から跳ぶからわかりやすいよね」
「あそこで教えているジャンプはトウループだよ」
須藤が子供たちにジャンプを教えている。ひときわ声が大きく跳ぶ度に声を出す健太を見て笑ってしまう。
「翼、どうしたの?」
「あの男の子がジャンプする度に大きな声を出すのがおかしくて」
そう言っている間にも健太が跳んで大きな声を出す。翼と三枝子は見つめ合って大笑いする。
翼が休憩からリンクに戻ると四ノ宮と須藤が話をしている。須藤は剛の2つ先輩で、一緒に全日本選手権を争ったこともある選手だった。
「須藤さん、今、教えている一条翼です」
「はじめまして。一条翼です」
「こんにちは。一条さん、今、話題のシンデレラに会えて嬉しいよ」
「それでは練習を再開するので、また今度」
「それではまた」
須藤は2人のもとを離れ、教え子たちの方に行く。
「今度はスピンを練習するぞ。昨日送った動画を見てきたかな。音楽をかけるからやってみて」
音楽をかける四ノ宮。それに合わせて3つのスピンを回る翼。送った動画と全く同じように回る翼。
「翼、本当にスピンの練習したことないんだろ」
「はい、ありません」
「動画を見て真似ているだけか」
「はい、何度も何度も動画を見ました」
動画を見ただけでこんなにうまくスピンができるのはたいしたもんだ。横浜アイスアリーナのメインエントランスで、三枝子は翼が着替えて出てくるのを待っている。翼がやってくる。
「お待たせ」
「ううん、じゃ行こうか」
そこに健太がやって来て翼に向かって
「俺、伊藤健太、よろしく」
と言うと手を出す。突然、声をかけられて驚く翼。でも健太だとわかって笑い出す。