医者の言葉は、私達を奈落の底に落とすものだった。
二歳を過ぎても言葉がでない。いよいよ妻と私は心配になった。妻が国立の大きな病院を予約したので一緒に行った。
医者は、脳のCTスキャンを撮った後、ショーと他の子供達を一時間位遊ばせ様子を見ていた。その後、医者の言葉は、まさに私達夫婦を奈落の底に落とす言葉であった。
医者は他人事の様に言った。いや、客観的な事実を私たち夫婦に伝えただけかもしれない。しかし、私たち夫婦には『非情』の言葉に聞こえた。
「この子は、通常の子供より十倍手が掛かります。覚悟してください」
私は、医者が何を言っているのか理解できなかった。
「普通の子のようにはならないのですか?」
医者は黙って首を振るだけであった。医者は何もかも分かっているのだ。だが、詳しい説明は何もしてくれない。下を向いて黙って聞いていた妻の重い口が開いた。
「今後、どうしたら良いのでしょうか?」
「市役所に育児相談する場所があるので、そこで相談してください」
妻と私は何も言えず病院を後にした。妻はずっとすすり泣いていた。