くしゃみとルービックキューブ 6.
洋一は隣を歩く岳也を見た。
「くしゃみさんて、彼女います?」なんだいきなり、というように岳也はかすかに笑った。
「いるわけないだろ? もうざっと十年くらいいねーよ」
「そっかぁ、十年かぁ」
洋一は夜空を見あげた。豆電球に似た星がうっすらと見える。
「おまえはどうなんだよ」
「僕もいませんよ」
岳也はフッと肩の力を抜いた。
「そうか」「なかなかできないもんですよね」そんなことを話しているうちに、岳也の家に着いた。家の扉には大きなクリスマスリースが飾られ、芝生の庭には、電球で縁取られた二匹のトナカイが暖かそうな光を放っている。この前洋一が来たときには、それらのものはなかった。
「おぉ、クリスマスしてますねぇ」
岳也は軽く肩をすくめる。「うちはアメリカンだからな」
トナカイを眺めていた洋一は、岳也に向き直った。