石油パニックは収まり、食品も出回るようになったが…
翌日、国分の板橋営業所長とともに東武ストアを訪ね、信州味噌一キロ袋詰の大量受注を得た時は、長年の夢が叶った気持ちで一杯になり、家内に電話で報告する際には胸が詰まり涙声になったことが今も心に焼き付いている。有難いことにその後、東急ストア、小田急ストアなど大手スーパーと次々と取引ができるようになり元請けの工場は生産で大忙しとなった。
取引開始に当たっては、国分との商談の経験が活かされた。まず大手スーパーのバイヤーに売込みに行き、取り扱いの承諾を頂いてからバイヤーに取引問屋を紹介してもらうのである。
ボトムアップ方式で大手問屋と新規口座を獲得することが容易になり、このやり方でほとんどの大手の食品問屋と取引ができた。ただし、大手と違いローカルブランドの商品をスーパーのバイヤーに扱ってもらうには、商品力より熱意と粘りで相手を説得する人間力を含む営業力のほうが重要で、簡単ではなかった。