壁に描かれた大きな猫の絵は、予算の都合でおとんの自作。猫か虎か、わかりにくい。サークル仲間の絵の評価は最低。

動物愛護管理センターから猫を5匹引き取った。ぼくは、どちらかといえばペルシャ猫ふうだけど、その5匹は、ロシアンブルーもどき、アメリカンショートヘアもどき、三毛猫、長毛のメインクーンふう、それに黒猫。

引き取りの条件は、人なつっこい性格であることはもちろん、人を噛まない、引っかかないだった。ぼくも5匹の猫ちゃんたちと接して安心した。先住のぼくにたいして、みんな敬意を表してくれたから。

猫カフェ開店初日は近所のサークル仲間がかけつけてくれた。猫好きなお客も、おおぜい来てくれた。その後は毎日のように大入り満員。ぼくをふくめた猫たちは大いそがし。お客さんに抱っこされたり、じっと見つめられたり、猫じゃらしで遊ばされたり。あちこちからスマホのレンズを向けられた。

開店してからは、ゲンキは裏の居間に置かれたままで、忘れられた存在に。朝晩2回のさんぽが1回になったり、ない日もあった。

おとんも、おかんも、バラ色の未来を予見。いそがしいので、おかんはすべてのサークル活動を、とうぶん休むことにした。

ところが、1か月もたつと、パタッと客足が止まった。おかんの友人たちは心配してぽつぽつと来てくれるけど、それ以外のお客が来なくなった。リピーターで来てくれる人がほとんどいない。

このままでは先細り。へたすると店じまいもありうる。さすがに、まあいいか主義のおとんと、おかんも、あせりだした。このままでは、使った400万円がムダになってしまう。

「サークル仲間に集まってもらって、お客を増やすための、何かいいアイデアをつのったらどうだろう」
「わかった。さっそく、みんなに声かけてみる」