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放課後、はやる心を抑えて今日の集合場所の視聴覚室に急いだ。
そろそろ各自バンドを組み始め、ドラム断念組もけっこういて、アコギとピアノのトリオになってたり、みんな色々だ。
ドラムの助っ人であちこち手伝ったりしてるうちに、
「うちにおいでよ」
「ウチの子になりな~!」
「一緒にやろ☆」
ありがたいことにいっぱい誘ってもらったが、俺は、自分がベースで組むバンドのメンバーを未だに決められないでいた。
あー、来た。
よかった!
あれ、メガネ掛けてない。
そういえば最初に会ったときもメガネなかったな。
「おー、よく戻ってくれた! 待ってたよ」
長身の吉田部長が少し身を屈めた下に、あの子の人懐っこい笑顔。
ちょっと目を細めた表情のあと、俺と目が合い、ぴょこっと軽く会釈してくれた。
やっぱ目、わるいんじゃん。
「おーい、ちょっと皆聞いて。まだドラム決まってないとこ…」
部長の声がけに、思わず、被せぎみに手を挙げた。
「はーい、ハイ! 俺っ、臼井さんとヤりたいです!」
一瞬、間があり、ドッ! 皆に爆笑された。
ん? ヤラかした? 俺。
目的語が抜けたか。バンド!
「椎名、ガッつきすぎ」
「言い方エロいよ」
「やらし~ (笑)」
焦るあまり、シクった。
言われた本人は、赤くなって、明らかに気分を害してる?
と思ったが、ちょっと笑ってくれた。
救われる、笑顔。