俳句・短歌 句集 四季 2021.01.04 句集「抱く」より三句 句集 抱く 【第23回】 松永 みよこ ―春― 身に余るミモザ抱えて人を待つ 猫の恋吾よりいくばくかは清く ―夏― 膝頭抱いて鎮まぬ青嵐 幸せを温めなおす五月かな ―秋― 千の菊抱きてあまりにも一人 りりりるり鈴虫まねてけんか終ゆ ―冬― 雪うさぎ今消えゆきし身を抱き 酉の市ちがう男の手も温し 平成の句姫、みよこの初句集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 とぎ汁を撒く手止まりし蟻の道 思い出の色より深き今朝の薔薇 避暑の宿いつか読みたき本持ちて
小説 『再愛なる聖槍[ミステリーの日ピックアップ]』 【新連載】 由野 寿和 クリスマスイヴ、5年前に別れた妻子と遊園地。娘にプレゼントを用意したが、冷め切った元妻から業務連絡のような電話が来て… かつてイエス・キリストは反逆者とされ、ゴルゴダの丘で磔はりつけにされた。その話には続きがある。公開処刑の直後、一人の処刑人が十字架にかけられた男が死んだか確かめるため、自らの持っていた槍で罪人の脇腹を刺した。その際イエス・キリストの血液が目に入り、処刑人の視力は回復したのだという。その槍は『聖(せい)槍(そう)』と呼ばれ、神の血に触れた聖(せい)遺物(いぶつ)として大きく讃えられた。奇跡の逸話(…
エッセイ 『振り子の指す方へ』 【最終回】 山口 ゆり子 「私、まだ生きているよ。でも、もう止めたい」…事故で恋人を亡くした私は、ひとり呟き、当てもなく歩き続けた。 きっとこの穴は一生埋まらないだろう。この悲しみと、この重みと、この残酷に揺れ動く運命にも逆らうことなんてできない。けれども悟は今でも、亜希子を守ってくれていた。悟の事故について散々騒ぎ立て、亜希子の元にまで押し掛けたマスコミやはやし立てるように騒いだ世間は、あっという間に悟のことを忘れた。その状況で、自ら死を選び、亜希子の心に住んでいる悟までをも葬ることができるはずもなかった。それは話題になるの…