「おまえ、今でも本気でくしゃみ一筋なの?」
当然といわんばかりに岳也は深くうなずく。
「斬新なのは認めるけどさー。斬新過ぎないか、それ。だいたいくしゃみなんかで曲作れんの?」
「作れるさ。立派に。今度聴きにこいよ。自信曲聴かせてやっから」
「ああ、今度な」拓未はハハッと笑うと、岳也の背中をばしばし叩いた。
「でも、もったいないよな~。飛びいりで入って、全然支障ないくらいできんだから、腕磨けばプロのスタジオミュージシャンにだって余裕でなれんのに」
そう言われることはよくある。だが岳也にその気はない。スタジオミュージシャンになどなりたくないのだ。そこになんの魅力も感じない。