猫のミミ
つぎの日もケージごしに、ミミとおじいさんのにらみあいが続つづいた。
缶詰のフードと水みずをとりかえても、まったく反応がなかった。ケージに近づいていくと「フーッ」と何度も威嚇した。それが4日目のことじゃった。
日差しが廊下までしっかり伸びきった朝、明るい部屋の中でミミは水を飲みだした。
「この調子じゃあ」おじいさんは、ケージからミミを出すことを決めた。
するとミミは、歳とった猫とは思えんくらい走りまわったそうな。
きっと自由がほしかったんじゃろう。キラキラ射しこむ光を追いかけたり、押し入れの中にもぐりこんだり。さんざん暴れまわったあとで、猫缶を食べはじめたんじゃ。
「これでやっとミミと友達になれるのう」その時のおじいさんの喜びようは、半端じゃなかったらしい。
それから少しずつ、おじいさんとミミの距離が近づいていった。
ミミは、時にはまだ威嚇したり、そうかと思うと足もとにピッタリくっついてきたり。猫特と有のツンデレ(「ツンツン」したり「デレデレ」したりすること)をくり返したそうじゃ。おじいさんは、ミミの行動がおもしろうて、一日じゅう、あきないでつきあった。