第1作『ブルーストッキング・ガールズ』
本田刑事が土足で、警官数名と部屋になだれ込んだ。
「おい女、さあ、来るんだ。ご主人も事情をお話しいただきますかな」
紀子は、ゆっくりと美津から手を放し、刑事と父と立ち去った。トメは美津を抱き、泣いた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。私、私どうしたらいいの。結局、病気の美津さんをこんなにしてしまって」
小さな声で美津が答えた。「トメさん、トメさん」
「美津さん……」
「トメさん、もう大丈夫よ。私は大丈夫」美津は顔を上げてニッコリと笑った。
「ワクワクしちゃったな。こんなの初めて。うふっ、嘘よ、みんな嘘」
「バカ―」多佳はまだ泣いていた。
「本当にキツネになっちゃったと思ったんだよ」喜久も涙を拭いている。
「演技力抜群!」晴もまだ泣いていた。
「痛快だったなー。気持ちよかったなー」
トメは笑った。美津も笑った。少女たちは笑い転げた。おなかが捩れるほど。笑いは止まらなかった。もっとも、それは儚い抵抗であると少女たちは微かに自覚していた。